第25回「世界に一つだけの花」SMAP
演歌と違って瞬発力が命と思われがちのJ-POP。でも、時に息の長い曲も現れる。中島みゆきの「地上の星」はその最たる例だ。174週という長期に渡りオリコン100位内にランクインという記録を作った。そして、この「世界に一つだけの花」も39週ぶりにオリコン1位に返り咲くという記録を生んだ。
●SMAPって?
(→レコード会社サイト)
中居正広 :1972年08月18日生 神奈川県出身
木村拓哉 :1972年11月13日生 東京都出身
稲垣吾郎 :1973年12月08日生 東京都出身
草? 剛 :1974年07月09日生 埼玉県出身
香取慎吾 :1977年01月31日生 神奈川県出身
1991年9月9日に「Can't Stop!! -Loving-」でCDデビュー。CDデビュー以前は、ジャニーズ事務所らしく、光GENJIのバックで踊っていた経験もあり。歌手以外にも俳優業などもこなし、徐々に人気を上げていく。1997年5月14日発売「セロリ」、1998年1月14日発売「夜空ノムコウ」、2000年8月30日発売「らいおんハート」等、聴かせる系の歌が彼らのイメージとなる。今クール(2004年1月〜3月)は5人それぞれがドラマに出演し、第一回の放送の視聴率が5人合わせて100%を超えるという記録を樹立。
■無欲の勝利
もともと2002年7月24日に発売された「SMAP 015/Drink! Smap!」の3曲目に収められていた「世界に一つだけの花」。制作された時点で、7ヵ月後にシングルカットされ、ミリオンセラーとなるとは予想しなかっただろう。これこそ、無欲の勝利だ。作詞曲は槇原敬之、そして槇原曲を聴いている人なら分かるだろうが、実に槇原らしい曲である。歌詞の具体性や、メロディライン。おそらく、彼はSMAPという名に媚びることなくこの曲を書いたのだ。しかし、彼はひとつのポイントを押えることと、時代を読むことを忘れなかった。男性アイドル集団としては、「ナンバーワン」であるSMAPに「ナンバーワン」でなく「オンリーワン」が大事だと歌わせること、ナンバーワンを目指して走り続けることに疲れている現代人に肩の力を抜かせること。
NO.1 にならなくてもいい
もともと特別な Only one
子供の頃から人と競うこと、比べることがが身体に染み付いている日本人。テストには点数が付き、順位がつけられ、会社に入れば出世という戦いに揉まれる。しかし、それはほんのひとつの方向からの判定基準でしかない。基本的な勉強はできたほうがいいに決まっているけど、その先は、自分が行きたい場所へ行けばいいのだ。競うなら好きなことで競えばいいし、競うことを放棄して自らの個性を主張するのもいい。本当に光る個性であれば、どこかで誰かに見つけられるだろうから。でも、それ以前に「好きなことが分からない」という若者が増えている。だから、村上龍著「13歳のハローワーク」という本が売れるんだろうな。知らない職業には憧れることさえもできないもんね。
話がそれたが、自分は自分であり、誰かと比べる必要がないことに気づいてもらえればこの曲は使命を果たしたことになる。
■紅白大トリへの抜擢
記憶に新しいことだが、2003年のNHK紅白歌合戦の大トリをつとめたのはSMAP。歌った楽曲は、この「世界に一つだけの花」。紅白のトリと言えば、演歌の大御所が定番となっている所に新しい風が入った。2003年を象徴する曲を選び、それをトリとするならばこの選択は最もだし、そうあればいいなという予想もした。(週刊テレビ放談「第54回紅白歌合戦」(前編)参照)。だけど、本当にそうなるとは、正直驚いた。
でも、これって、彼らが単なるアイドルでないことの証明にも繋がる。もちろん、楽曲に恵まれたことは言うまでもない。だけど、楽曲がよくて、その年どんなに評価されたとしても、これまでの蓄積や、スター性(懐かしい表現だな、オーラとでもいうべきか)がなければ、ブーイングされてしまうところ。でも、昨年の抜擢は、みんなが「良し」と頷いたように思う。紅白には、いろんな大人の事情もあるのも事実だけど、NHKのこの勇気には拍手を送りたい。そして、その紅白効果で、39週ぶりのオリコン1位への返り咲きが果たされたのだ。
この中で誰が一番だなんて
争う事もしないで
バケツの中誇らしげに
しゃんと胸を張っている
紅白自体が合戦であり、勝ち負けを決めるものだけど、紅白って出場するということに意味があると思う。昔よりは薄れたかもしれないが、紅白に出るのが夢と語る歌手も多い。出場できるできないも勝ち負けと言ってしまえば、実も蓋もないが、出場したなら、争う事なくしゃんと胸を張って歌えば、それでOKなのかもしれない。
公開:2004/01/30 TEXT・みど(c) 2003 RGS680,all rights reserved.