第30回「やさしいキスをして」DREAMS COME TURE

3月になったとたん、雪が降った東京地方。びっくりしました。今年の天候はどうなってんの？　でも、今日は啓蟄。虫たちも目覚める季節です。さて、今日は、日本を飛び出しアメリカへ進出もしているDREAMS COME TUREの「やさしいキスをして」を紹介します。

●DREAMS COME TUREって？
（→公式サイト）
吉田美和:1965年05月06日生　北海道出身
中村正人:1958年10月01日生　東京都出身
1989年3月20日、シングル「あなたに会いたくて」、アルバム「ドリームズ・カム・トゥルー」でデビュー。1990年2月、中山美穂主演のドラマ「卒業」の主題歌となった「笑顔の行方」がヒット。1993年発売のアルバム「The Swinging Star」は300万枚の売り上げを記録する。1995年には常盤貴子、豊川悦司主演のドラマ「愛していると言ってくれ」の主題歌となった「LOVE LOVE LOVE」は200万枚を売り上げる。2002年3月にメンバーのひとり西川隆宏が脱退。現在は2人で活動している。

■普遍を歌う説得力

DREAMS COME TURE（ドリカム）といえば、デビュー当時は、具体的な歌詞が売りだった。共感できる出来事がちりばめられた初期の作品、「週に1度の恋人」や「エメラルドの強み」、「うれしはずかし朝帰り」、「未来予想図II」、「 LAT.43゜N 」などに心惹かれた人も多いではないだろうか？　歌詞は、自分の思いをつらつらと書くと詩という抽象的なものになってしまうものだが、吉田美和は詩と歌詞をきっちりと分けて書いていた。そういう具体的な歌詞でメッセージを伝えた時代があったからこそ、今、普遍的な彼らの歌が心にしみる。普遍的な歌を歌うことって、とても難しいこと。それは、表現力の問題もあるけど、歌い手に聴き手を説得させるだけの存在感があるかどうかが問われるからだ。その点では、すっかり合格なドリカム、短い歌詞の中にぐっとくる言葉があった。

報われなくても 結ばれなくても
あなたは　ただ一人の 運命の人

言葉として読んでしまうと、もしかしたら「普通じゃん」って思う方もいるかもしれない。そう、特別なことは歌っていない。具体的なアイテムも出てこない。だけど、薄くない、安くない。本当に大切な人を心に持ちたいと強く思わせる言葉です。

■「砂の器」のエンディングで流れる時

この曲は日曜21時からTBS系で放送されている中居正広主演のTBSドラマ「砂の器」のエンディングとして流れている。1974年に映画にもなったこの作品は、内容的にも重く、主演である中居演じるピアニスト和賀英良は、複雑な過去を背負って生きている男だ。その和賀は孤独であり、自分の犯した罪に怯えている。そのシチュエーションにこの歌詞がとても迫ってくる。

そっと髪を撫でて 肩を抱いて そばにいるね
あなたが眠るまで やさしいキスをして

強く見える人ほど、弱かったり。「大丈夫」と言っている時ほど、やばかったり。人は、自分の意識とは別の無意識という本音を持っている。そんな心のやわらかいところを傷つけてしまうとき、一気に大量出血をしてしまうのだ。だから、こんなふうに、誰かが側に居ることがどんなに心強いことになるか。もちろん、側に居る人に対して、いつもいつも感謝できるほど、人はマメではないし、めんどくさいと思うこともあるだろうけど、本当に大切と思える人が、なんとなく側にいること、近くに感じることで、人はずいぶん強くなれるものだ。