第58回「時の舟」松たか子
夕方になると、すっかり涼しくなりました。日本って四季があっていいなと思う時期のひとつです。日が落ちるのが早くなって、夜がだんだん長くなって行くのを感じています。さて、本日は、松たか子「時の舟」。
●松たか子(まつたかこ)って?
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松たか子:1977年06月10日生 東京都出身
1997年03月21日 、1stシングル「明日、春が来たら」でメジャーデビュー。「時の舟」は17枚目のシングルとなる。父は松本幸四郎。兄は市川染五郎。姉は松本紀保という芸能一家。歌以外にも舞台、ドラマ、映画など活動の幅は広い。身長165センチと、意外に背が高いことに驚いた。
■必死に誰かを求めた時
「なりふりかまわず」という言葉がある。そんな状態になったことってありますか? 普通に暮らしていると、あまりないのかも。例えば、災害などが起きたとき、人はなりふりかまわず逃げる、などの行動をするでしょう。だけど、そこまで追い込まれるのは、日常では少ない。一生懸命頑張る、必死にやる、ってこととは違う危機感を感じる言葉。この歌詞は、ふと、その「なりふりかまわず」という言葉を思い出すものだった。
この声は あなたに叫ぶために
振り回した理想は 捨ててしまったの?
この声は あなたに届く為に
「振り回した理想」。これは安全な場所で描く身勝手な夢というイメージ。それを捨てて、あなたを呼ぶ。あなたへと叫ぶ。その姿は神々しいような、女の生理を感じる。必死で恋人を呼ぶ。もしかしたら、我が子を呼ぶ。きれいごとなどない。強烈な感情の現れだ。
■ドラマとのリンク
TBS系ドラマ「逃亡者」の主題歌だったこの歌。ドラマの内容と歌詞がかなりリンクしている。妻と子を殺された主人公が、犯人と疑われ、自ら真犯人を見つけるために逃亡するというストーリー。主人公の生きる今は、妻と子を失い非常に悲しい世界。再び笑うことなどできそうにない。だからこそ、主人公が生きなければならない今をこう歌っている。「悲しい世界」。この言葉だけを取り上げると、なぜ、悲しさをそんなに強調しなければいけないのか? と思ったが、納得した。
また懐かしいあの笑顔が
輝きを取り戻して
この悲しい世界で生きてく
ドラマが終わり、エンディングでこの曲が流れる時、つい、曲に聞き入っている時があった。松たか子が歌っているということを忘れ、「いい曲だなぁ、誰の曲だろう?」なんて思うことも。ドラマの力をかりて、より世界観が広がった曲と思える。もちろん、楽曲にパワーがあるからなせる技だけどね。
公開:2004/09/18 TEXT・みど(c) 2003 RGS680,all rights reserved.