第99回「小さな恋の夕間暮れ」森山直太朗
梅雨らしい天気の東京ですが、他の地域は大変なところもあるようで。本当に自然の力の大きさを思い知らされる気持ちです。
●森山直太朗(もりやまなおたろう)って?
(→公式サイト)
(→レコード会社サイト)
森山直太朗:1976年04月23日生 東京都出身
大学時代から楽曲を作りはじめ、直太朗という名前で、ストリートライブやライブハウスでの活動を開始。2001年3月7日にミニアルバム「直太朗」でインディーズデビュー。2002年10月02日にミニアルバム 「乾いた唄は魚の餌にちょうどいい」でメジャーデビュー。2002年11月27日に発売した「さくら(独唱)」が大ブレイク。ある時は “夕暮れの代弁者” として、ある時は “起き抜けの革命家” として、また 2005年2月に敢行された劇場公演 『森の人』 では、 “旅人” として、表現者としても様々に変化を魅せている。2005年、『傑作撰 2001〜2005』 と題された、初期ベスト盤のリリース。
■比喩の面白さ
背中を丸めるは「人」を表現する言葉、しかし、それを受けたのは飛行船。こんな比喩って面白いなって思う。人を飛行船に例えているのか、飛行船を人に例えているのか。解釈は自由だろう。その後ろには、「見上げた」という言葉があるから、実際に飛行船はあるのかな。
南へと向かう 背中丸めた飛行船
見上げた横顔 いつもと同じ交差点
何となく、淋しい感じが漂うのは、「背中丸めた」という言葉のせいだろう。一言で、強い印象を持たせるのってけっこうすごいこと。長く説明すれば、分からせることができるが、歌詞には制限がある。その中で使う言葉は、厳選に厳選を重ねるのだ。
■“夕暮れの代弁者”らしさかも
この曲は、「夕暮れの代弁者」と自らを語っていた時期がある彼のひとつの形となるのだろうか。ただ気になるのが「夕間暮れ」という言葉。私は、耳にしたことがなかったのだけど、ちゃんと辞書には掲載されている。源氏物語でも使われている言葉らしい。そして、「まぐれ」は目暗れの意、となっている。つまり夕方うす暗くてよくみえないこと。またその頃。夕暮れ(広辞苑より)。夕暮れと歌ってしまってもいいのだろうが、「夕間暮れ」とすることで、印象的に耳に残る。
小さな恋の夕間暮れ 君を愛してた
そして、「小さな恋の」に付けることで、恋の行方が見えにくい時期なんて解釈も可能。彼の描く世界は、情景が浮かびやすくて、でも、その中で想像力を刺激される。そんな言葉の集まりだ。
公開:2005/07/01 TEXT・みど(c) 2003 RGS680,all rights reserved.