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レポートだったりレクチャーだったり
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■■書評■■

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とつぜん書評だったり Vol.1

(あし)(みど)は読書家、ではないかもしれませんが、いろんな本を読むように心がけているのも事実。ロイヤルガーデンサラダ交換日記でも本の話題はよく出るのですが、本について伝えたい事全部書けないこともあるので、「レポート&レクチャーの月曜日」にはたまに書評も仲間入りいたします。
書評って「本のレポート」って言えるしね。

というわけで、今回は(あし)が「ハワイッサー」水野スミレ(角川書店)、「物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン」大塚 英志(朝日文庫)という全く毛色の違う二冊を紹介。

■ハワイッサー

ハワイッサー
水野スミレ
角川書店
[→amazonで購入]

35歳専業主婦のある一日の物語。とくに事件が起きるわけでもなく朝起きてから夜寝るまでを追っただけという変わった小説。というプロットに興味を持ったのと、これがデビューの専業主婦が作者というところに惹かれて読んでみた。

同じく主婦作家としてデビューした野中柊みたいな新感覚の小説なのかな、と思ったらそうではなく、非常に普通な文体だった。

「全ての物事には意味がある、世界は善意に満ちている」、そんな主人公の主婦の思想(=作者の思想、と思って間違いないだろう)は優等生過ぎにも思える。しかし、世の中全体がマイナス思考に向かいがちな昨今、強烈なプラス思考のパワーを感じるこの小説は、今の世の中にこそ必要とされるものかもしれない。

『読んだ後、元気が出てくる本。』
ありきたりだが、このフレーズがとても似合う小説だ。エッセイとか啓蒙書感覚で読めるので、小説と思って構える必要はなし。

ところで主人公の主婦は、大学教授である夫以外に二人の男性と性的な関係を持っている。この本の書評や、本の表紙に載っている編集者が書いたであろうあらすじにも、このことを「浮気」と表現してあるのだが、どうなんだろう? 私はこれは新しい男女の関係であり「浮気」とはカテゴライズされないものではないのか、と思った。
気になった人はぜひこの本を読んでみてほしい。そのへんのニュアンスが分かると思う。
この主婦、および作者と同年代の私としては、主人公が複数の男性と関係を持ち、特に罪悪感を持っていない(たぶん浮気とカテゴライズしていない)ことは、とても理解できる。
ここを理解できるかできないかが、この小説を受け入れられるかられないかの境界なんだろうな、きっと。(あし)

■物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン

物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン
大塚 英志
朝日文庫
[→amazonで購入]

スポーツの世界では、科学的トレーニング法が認められてきて、昔のような根性、精神論をうたう指導者も少なくなってきたのではないかと思う。何のジャンルにおいても、ただがむしゃらに練習すればいいというわけではない。また、練習法が分からないから自分にはできない、と思いこんでいることもあったりするだろう。
本書は、小説を書くことにおける基礎体力作り、正しいフォームを身につけるための基本、のような部分についてのトレーニング法を教えてくれる。もちろん理論も教えてくれるが、トレーニング法を与え、それを実践してもらうことに重きを置いている。

作者は小説を書ける人と書けない人との間にある差は、才能やセンスではなく、物語る力、物語を構成する力にあると考える。そしてそれは、誰でも練習すれば身に付くものだと思っている。そこで色々なトレーニングによって、物語を構成するための力を養ってもらおうとしているわけだ。

そのトレーニング法は、手塚治虫の漫画から物語の構造、形態を盗んで「盗作」するレッスン、村上龍になりきって小説を書くレッスン、つげ義春の漫画をノベライズするレッスン、となかなかにショッキングなものだ。しかし、そのどれにも、確かにそうだよね、と思わせるだけの説得力のある解説がついている。このトレーニングを積めば、確かに「物語」を書くことはできるようになる気はする。

しかしこの本が教えてくれるのは、まずは「物語」が作れるようになるための段階までだ。スポーツで言えば、ルールを学んで、基本のフォームを覚えて、さて試合に出られるようになった、くらいのところだ。

しかし一番大切だが、一番誰も教えてくれなかった(あるいは教えようとしなかった)、物語る力、技術に焦点を当てたのは、正しいと思う。
たとえば最近では、パソコンを使ってだれでも綺麗な年賀状をデザイン、印刷できるような世の中になった。しかしプロ顔負けの素晴らしい年賀状を作る人もいれば、笑っちゃうようなダサダサなものを作る人もいる。
誰もが物語る力を持ったとしても、これと同じような事はおこるだろう。そして、物語る力を持っている、と言うだけで小説家でいられたような人の居場所はなくなっていくだろう。この本の作者はきっと、このことを願っているのではないか、そんな気がする。

小説を書きたい人の実用書としてだけでなく、物語の構造に興味のある人、いまの日本文学に憂いを持つ人にも楽しめる本。(あし)

(2003/8/25公開)


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