温暖化したっていいじゃん:ほんとうの環境問題(池田清彦、養老孟司)
今や小さな子供でも地球温暖化問題のことを知っている。ボクがエアコンを付けると、北極の氷が溶けて、島が海に沈むんだよ…。
でも、地球が温暖化したっていいじゃんというのが「ほんとうの環境問題」の著者二人の意見。
えーっ、ツバルが海に沈んで「さらば、ツバルよ~」となってもいいの!? と思うかもしれないが、なら沈まないような具体的な対策において日本は技術支援すればいいじゃないかと言う。
確かに。庶民がちまちまとCO2排出量を減らしたところで、すぐに海面上昇の問題が解決するわけでもないよな。
この本によると、日本が京都議定書通り13年かけてCO2を6%減らすことができても、それによって減らすことのできる温度は0.004℃だという。
イラストは本書の内容と直接の関係はありません
日本は温暖化対策に毎年1兆円使っているらしい。それより、そのお金を具体的な問題解決に使った方がいいんじゃないか。あるいは、コンピューターによる温暖化のシミュレーションを本格的にやることにまずお金をかけたほうがいいと本書は言う。
そして、一番気になるのはCO2排出権の売買について。日本は京都議定書の約束通りにCO2排出量を減らすのは絶望的と言われている。その場合、数千億円から1兆円の税金を使って排出権を海外から購入することになるのだ。
排出権ビジネスで儲けようというEU諸国のたくらみに、“いいカッコしい”の日本がまんまと乗せられたというのが、この本による京都議定書のほんとうのところ。
そもそも、環境問題には流行があるとこの本では指摘している。フロン、ダイオキシン、環境ホルモン、そして今流行ってるのが地球温暖化とCO2なのだ。今では自然災害のほとんどが地球温暖化の影響じゃないかと根拠もなく言われている。しかし、ほんの30年くらい前には寒冷化の影響だと言われていたそうなのだ。
そんな流行に乗ってしまって、京都議定書で貧乏くじを引かされたというのは、日本らしいとも言える。いざCO2排出権のために税金投入となったら、今エコだとか地球にやさしいだとか言ってる庶民もマスコミも、日本政府を叩く方に回るんじゃないかな。それも日本らしいと言えるが、その前にひとりひとりがほんとうのコトに興味を持ち、考える必要はあるはず。
この本の内容全てを鵜呑みにするのもどうかと思うが、環境問題を違った角度から考えるきっかけとしてはうってつけの本。なお、著者二人とも、資源をどんどん無駄使いしてCO2をまきちらせと言ってるわけではないので念のため。
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キーワード:ほんとうの環境問題 養老孟司 池田清彦 京都議定書
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